車を運転しながらスマートフォンや携帯電話を使用するのは非常に危険な行為で、携帯電話使用等に係わる交通事故件数は多いときで年間3,000件近くにも上ります。近年では、携帯電話使用等の罰則が強化されたことで交通事故件数も以前と比べ減少傾向にはあるものの、未だ発生しているのも事実です。
この記事では、道路交通法の改正により罰則が強化された「ながら運転」について、罰則内容や違反点数などについて解説していきます。
ながら運転・ながらスマホとはどんな行為?
ながら運転は、車の運転中にスマホや携帯電話で通話をしたり、カーナビやスマホなどの画面を注視したり操作したりする行為のことです。「ちょっとぐらい大丈夫だろう」こうした、ちょっとした一瞬の気の緩みが大きな事故に繋がるのです。
下の図表は警視庁が提示している「携帯電話使用等に係る使用状況別交通事故件数の推移」と「令和2年における死亡事故率比較」です。
H27 | H28 | H29 | H30 | R元 | R2 | |
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全事故 | 2,537 | 2,605 | 2,832 | 2,790 | 2,645 | 1,283 |
うち 死亡事故 | 39 | 36 | 40 | 42 | 42 | 20 |
令和元年12月より携帯電話使用等の罰則が強化されたことなどから、令和2年では大幅な減少していますが、携帯電話使用等に係る交通事故が1,283件と依然として発生し続けています。
また、運転中に携帯電話等を使用している場合と、使用していない場合と比べた場合、死亡事故に繋がる危険性が約2.1倍に上がるとしています。
ながら運転・ながらスマホの危険性
「ながら運転・ながらスマホ」は大きな事故に繋がる非常に危険な行為である。ということは明らかです。下の図は、1秒間に車が進む距離を表したものです。
たとえば時速40キロで走行していた場合、車は1秒間に約11メートル進みます。これが1秒間ではなく2秒間だとしたら、単純に約22メートル進むことになります。さらに時速60キロの場合だと、1秒間に約17メートル、2秒間では約33メートル進みます。
前方を全く見ないでこれだけの距離を走行してしまうと、歩行者や停止車両に気がつくのが遅れてしまい、大きな事故を起こしてしまう可能性が高くなります。
「ほんの一瞬だから」「直線道路だから」こうした一瞬の油断が取返しのつかない重大な交通事故を招く原因となるのです。運転中はわき見をせず前方をしっかり注視し、ドライバーとして「安全運転の義務」これを常に忘れてはいけません。
ながら運転・ながらスマホに対する罰則強化
運転中にスマホや携帯電話で通話をしたり、画面を見たり操作したりなど、いわゆる「ながら運転・ながらスマホ」に係る交通事故が多発していたことから、令和元年6月に改正道路交通法が公布され、同年12月1日より、運転中に携帯電話などを使用することなどに対する罰則が強化されました。
令和元年12月1日より罰則等の強化されました。下記は改正前と改正後の罰則等の強化内容です。
携帯電話使用等「保持」
保持とは携帯電話等を使用し、または手に保持して画像等を表示して注視したものをいいます。
罰則 | 5万円以下の罰金 |
反則金 | 普通車 6千円 |
違反点数 | 1点 |
罰則 | 6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金 |
反則金 | 普通車 1万8千円 |
違反点数 | 3点 |
携帯電話使用等「交通の危険」
交通の危険とは携帯電話等の使用により、道路における交通の危険を生じさせたものをいいます。
罰則 | 3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金 |
反則金 | 普通車 6千円 |
違反点数 | 1点 |
罰則 | 6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金 |
反則金 | 普通車 1万8千円 |
違反点数 | 3点 |
ながらスマホ・ながら運転の定義
ながらスマホに対する罰則が強化されたのは分かったけど、では、「どこまでが“ながら”になるのか?」ドライバーとしては気になるところです。
まず、道路交通法第71条「運転者の遵守事項」第5の5の条文には、下記のように記載されています。
【道路交通法第71条(運転者の遵守事項)第5の5】
自動車又は原動機付自転車(以下この号において「自動車等」という。)を運転する場合においては、当該自動車等が停止しているときを除き、携帯電話用装置、自動車電話用装置その他の無線通話装置(その全部又は一部を手で保持しなければ送信及び受信のいずれをも行うことができないものに限る。第百十八条第一項第三号の二において「無線通話装置」という。)を通話(傷病者の救護又は公共の安全の維持のため当該自動車等の走行中に緊急やむを得ずに行うものを除く。同号において同じ。)のために使用し、又は当該自動車等に取り付けられ若しくは持ち込まれた画像表示用装置(道路運送車両法第四十一条第一項第十六号若しくは第十七号又は第四十四条第十一号に規定する装置であるものを除く。第百十八条第一項第三号の二において同じ。)に表示された画像を注視しないこと。
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この条例を見ると、ながら運転・ながらスマホの対象となる行為は、以下の事項が該当すると考えられます。
- 携帯電話用装置等を通話のために手に持って使用する行為
- 画像表示用装置に表示された画像を注視する行為
画像表示用装置とは、カーナビや自動車テレビ、スマホ・携帯電話のディスプレイ部分などが該当します。
原則として、走行中はスマホや携帯電話等で通話したり、画面を注視したり、操作したりする行為は禁止されており道路交通法違反となります。そのため、どうしても運転中にスマホや携帯電話などを使用しなければならないという時は、一旦安全な場所に車を停車させてから使用するようにしましょう。また、ハンズフリーを使用して通話すれば違反にはなりません。
とはいえ、携帯電話使用等の違反になるのは、あくまで走行中のこと。そうなると、赤信号で車が停止しているときは違反にならないのか?という疑問が湧いてきます。
確かに、赤信号では原則として車を停止させなければなりませんので、スマホや携帯電話等で通話したり、画面を注視したり、操作したりしても道路交通法違反の対象にはなりません。
ただ、赤信号で停止しているとはいえ、スマホなどを操作していると周囲の状況を把握することが難しくなるため、たとえ赤信号で停止中であっても、スマホなどの操作は止めた方が良いでしょう。
まとめ
携帯電話使用等の罰則が強化されたのは、ながらスマホ・ながら運転が原因で交通事故が急増しているからです。「ちょっと画面を見るだけだから」「見通しの良い直線道路だから大丈夫」こうした小さな気の緩みが大きな事故に繋がるのです。
「違反行為でも捕まらなければ大丈夫」「ここまでならセーフ」そういうことではなく、エンジンをかけてハンドルを握ったら運転に集中し、終始安全運転を心がけるようにしましょう。
ながらスマホやながら運転は非常に危険です。車を運転する際は、スマホや携帯の電源を切ったり、ドライブモードに設定したりするなどして、常に安全運転を意識してください。
画像出典元:photo AC