「食料品の消費税率をゼロにすべきだ」──2025年5月、高市早苗氏は力強くこう主張していた。
当時は野党的立場から石破首相を批判し、国民の味方を演じていた彼女。
しかし、10月に自ら首相の座に就いた途端、その公約はあっさりと消え去った。
わずか5ヶ月。
この短期間で、高市氏の「国民に寄り添う姿勢」は、霧のように消えてしまったのだ。
5月の高市氏「食料品消費税ゼロは確信していた」
2025年5月13日、高市氏はインターネット番組で石破首相(当時)の消費税減税に慎重な姿勢について、「食料品の消費税率ゼロだと確信していた。かなりがっかりしている」と述べた。
さらに5月の自民党税制調査会では、「食料品の消費税率をゼロにすべきだ」と堂々と主張していた。
その理由も明確だった。
賃上げの恩恵を受けられない退職者や病気療養中の人、障害を持つ人たちにも、食料品消費税ゼロなら公平に支援が届く──。
「困っている人がいる時に国が歳出や減税を惜しむのはおかしい」
この言葉に、どれだけの国民が希望を抱いただろうか。
9月の高市氏「即効性がない」と手のひら返し
ところが、2025年の総裁選が始まると風向きが変わった。
高市氏は、自身の公約に食料品消費税ゼロを盛り込まず、会見で「物価高対策として即効性はない」と方針転換の理由を説明した。
9月21日の番組収録では、「あらゆる選択肢を排除する気はない」としながらも、党内の反対論が根強く、各店舗のレジの仕様変更にも時間がかかるとして「即応性がない」と指摘した。
いやちょっと待ってほしい。
5月には「確信していた」政策が、なぜわずか4ヶ月後に「即効性がない」に変わるのか?
レジの仕様変更が必要なことは、5月の時点でわかっていたはずだ。
麻生太郎の影と財務省の壁
高市氏が方針を転換した背景には、麻生太郎最高顧問の存在があった。
麻生氏は9月の派閥研修会で、「インフレ下で消費税率を下げて消費が増えた例はない」と発言しており、高市氏周辺は「麻生氏の意向も考慮した」と漏らしている。
つまり、国民のためではなく、党内の権力者の顔色を窺って公約を捨てたのだ。
2024年9月の総裁選で、高市氏は最多の党員・党友票を獲得しながら、決選投票で石破氏に敗北した。
「『高市首相』では国政が混乱する」との懸念から、国会議員票が石破氏に集まったとの見方が支配的だった。
今回、高市氏は「自身のカラーを薄める」戦略を取った。
消費税ゼロという「過激な公約」を捨て、党内の反発を避けることで、ようやく首相の座を手に入れた。
「検討」という名の先送り
現在、自民党と日本維新の会の連立政権合意では、食料品の消費税ゼロを「検討」するとしている。
しかしながら、政治の世界での「検討」とは「やらない」の婉曲表現であることを、私たちは何度も見てきた。
給付付き税額控除の導入、食料品の期間限定の消費税減税などを「検討する」とされているが、財源なく無責任には実施しにくいという慎重姿勢だ。
結局、「サナエノミクス」で恩恵を受けるのは誰なのか。
株を持っている富裕層や、半導体・防衛関連企業だけではないのか。
日々の食費に苦しむ庶民には、何も届かないのではないか。
国民は「言うだけ番長」に騙されたのか
高市氏の5月の発言を振り返ってみよう。
「賃上げのメリットを受けられない方々にも広くメリットがあるのは、食料品の消費税率ゼロ」
この言葉は、間違いなく正しい。
そして多くの国民が共感した。
だからこそ、2024年の総裁選で高市氏は最多の党員・党友票を獲得したのだ。
しかしながら、権力を手に入れた途端、その公約は消えてしまった。
これは明らかな裏切りではないのか。
リーダーシップの欠如
高市氏は消費税減税について、「自民党の偉い人たちが集まる会議で、『下げよう』という意見が多数にならなかった」と説明した。
本来であれば、総理大臣は国民の生活を守るために、党内や財務省の反対を押し切ってでも政策を実行する存在のはずだ。
しかしながら高市氏は、党内の「仲間割れを恐れて」国民を裏切る道を選んだ。
これが、18〜39歳の若年層から80%の支持を集めた首相の姿なのか。
甚だ疑問である。
株価5万円、食卓は火の車
サナエノミクスで日経平均株価は5万円を突破した。
半導体企業や防衛関連企業の株主は笑顔だろう。
しかしながら、1ドル=154円という円安が進行し、輸入食品の価格は高騰している。
パンも、牛乳も、野菜も、肉も──すべてが値上がりしている。
食料品消費税ゼロを実現すれば、年間約5兆円の負担軽減になるはずだった。
国民一人当たり約4万円の支援だ。
この4万円が、どれだけ多くの家計を救えたか。
しかし、高市首相はその選択をしなかった。
結論:口先だけの「国民の味方」
高市早苗首相は、野党的立場にいる時は勇ましく国民の味方を演じた。
しかしながら、権力の座に就いた途端、財務省と党内の圧力に屈した。
「食料品消費税ゼロ」という公約は、単なる票集めの道具だったのか。
私たちは、この5ヶ月間の「変節」をしっかりと記憶しておく必要がある。
次の選挙の時に、「あの時、何を言っていたか」を思い出すために。
政治家の言葉は軽い。
一方で、私たちの一票は重い。















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