2025年11月、高市首相の「台湾有事は存立危機事態に該当する可能性がある」という発言が大きな波紋を呼んでいます。
しかし、そもそも「存立危機事態」とは何なのでしょうか?
この記事では、日本の安全保障を理解する上で欠かせないこの重要な概念について、初心者にも分かりやすく解説します。
存立危機事態の基本的な意味
存立危機事態(そんりつききじたい)とは、2015年に成立した平和安保法制(安保法制)で新たに定められた概念で、日本が集団的自衛権を行使できる条件を定めたものです。
具体的にいえば、「日本と密接な関係にある国が攻撃されて、日本の存立が脅かされる状況」を指します。
この事態が認定されると、日本は直接攻撃を受けていなくても、自衛隊が武力行使できるようになります。
なぜこの概念が生まれたのか
憲法9条との兼合い
日本国憲法第9条は戦争放棄を定めており、長年にわたって「個別的自衛権(自国が攻撃された時の反撃)」のみが認められると解釈されてきました。
しかしながら2014年、安倍政権は「限定的な集団的自衛権の行使は憲法上許される」と閣議決定で憲法解釈を変更。
これを受けて2015年に平和安全法制が成立し、「存立危機事態」という新しい概念が法律に明記されました。
安全保障環境の変化
この背景には、中国の軍事力増強や北朝鮮の核・ミサイル開発など、日本周辺における安全保障環境の大きな変化が関係しています。
日米同盟を強化し、アメリカが攻撃された場合にも日本が協力できる法的根拠を整えることが目的でした。
存立危機事態の3要件
存立危機事態が認定されるには、以下の3要件すべてを満たす必要があります。(新三要件)
密接な関係にある他国への武力攻撃
日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより日本の存立が脅かされる明白な危険を生むこと。
他に適当な手段がない
日本の存立を全うし、国民を守るために、武力以外の適切な手段が存在しないこと。
外交交渉など、武力行使以外の方法では対処できない状況
必要最小限度の実行行使
必要最小限度の実力行使にとどまること。
無制限に武力を使えるわけではなく、必要な範囲内に限定される
他の事態との違い
日本の安全保障法制には、存立危機事態以外にも、いくつかの「事態」が定義されています。
武力攻撃事態
日本が直接攻撃を受けた、または受ける明白な危険がある状況です。
この場合は、個別的自衛権に基づいて自衛隊が対処します。
存立危機事態との最大の違いは、「日本自身が攻撃されているかどうか」です。
重要影響事態
日本の平和と安全に重要な影響を与える事態で、武力行使はできませんが、米軍などへの後方支援が可能となります。
存立危機事態よりも、危険度のレベルが低い状況を想定したものです。
実際に認定されるとどうなるのか
存立危機事態が認定されると、以下のような対応が可能となります。
防衛出動命令
首相が国会承認を経て(緊急時は事後承認)、自衛隊に対して防衛出動を命令できます。
武力の行使
自衛隊が他国の領域でも武力行使が可能になります。(ただし必要最小限度)
米軍等との共同対処
同盟国の軍隊と連携して、軍事行動を取ることができます。
存立危機事態をめぐる論争
- 日米同盟を強化し、抑止力が高められる
- 現実の安全保障環境に対応できる
- 同盟国との信頼関係が深まる
- 憲法9条の平和主義に反する
- 日本が戦争に巻き込まれるリスクが高まる
- 「明白な危険」の判断が曖昧で、政府の裁量が大きすぎる
- 歯止めが効かなくなる恐れがある
台湾有事と存立危機事態
2025年11月、高市早苗首相が、「台湾有事が存立危機事態に該当する可能性がある」と国会で答弁し、中国が強く反発する事態となりました。
これは、台湾海峡で軍事衝突が起きた場合、日本が米軍と共に軍事行動に参加する可能性を示唆したものです。
従来、日本政府は具体的な想定を明言することを避けてきましたが、現職首相が公の場で言及したことで、大きな波紋を呼んでいます。
まとめ
存立危機事態とは──
- 2015年の安保法制で新設された概念
- 日本が集団的自衛権を行使できる条件を定めたもの
- 3要件すべてを満たす必要がある
- 認定されると自衛隊が武力行使できる
- 憲法解釈の変更により生まれた、論争のある概念
この概念は、日本の安全保障政策の大きな転換点を示すものであり、今後の日本外交を考える上で非常に重要なキーワードであることは間違いありません。














アメリカ軍が攻撃を受けた場合など