選挙が近づくたびに、物価高対策として「食料品の消費税をゼロにする」という政策が繰り返し登場します。
すでに、家計への効果が限定的であることや、制度面で副作用については多くの指摘があります。
それでもなお、この政策が何度も持ち出されるのはなぜなのでしょうか。
本記事では、政策の善悪を論じるのではなく、
- なぜこの政策が政治的に選ばれやすいのか
- なぜ別の選択肢が後回しにされがちなのか
といったところに焦点を当て、政治と経済の構造から整理します。
「家計にやさしい」と一言で説明できる強さ
食料品の消費税ゼロは、説明が非常に簡単です。
- 毎日の買い物が安くなる
- 誰にとっても分かりやすい
- レシートで効果が見える
複雑な制度説明を必要とせず、「家計支援」「物価高対策」という言葉と結びつけやすい点は、政治にとって大きな利点です。
一方で、社会保険料の見直しや賃金構造の改革は、
- 効果が間接的
- 説明がむずかしい
- 反対意見も出やすい
といった性質を持ちます。
その結果、説明コストが低い政策が優先されやすくなります。
「時限措置」にしやすいという政治的メリット
食料品ゼロ税率は、多くの場合「期間限定」や「一時的な対策」として提案されます。
これは政治的には扱いやすい設計です。
- 恒久減税ではないため、財源論を先送りできる
- いずれ元に戻す前提で、制度の根本には触れずに済む
結果として、
本質的な税制・社会保障改革を避けたまま「やっている感」を出せる。
という効果を持ちます。
マクロ経済政策と選挙向け政策のズレ
マクロ経済の観点から見れば、
- 恒常的な可処分所得の増加
- 需要を安定的に押し上げる政策
が重要になります。
しかし、選挙を意識した政策では、
- 即効性
- 分かりやすさ
- 一時的な負担軽減
が優先されがちです。
この結果、
- マクロでは効果が弱い
- しかし政治的には評価されやすい
という政策が繰り返し採用される構造が生まれます。
税制の「いじりやすさ」と社会保険料の「触れにくさ」
消費税は、政治的に調整しやすい税目です。
- 税率を上下させやすい
- 対象品目を限定できる
一方、社会保険料は、
- 法制度が複雑
- 財源と給付が強く結びついている
- 既得権益との調整が必要
といった理由から、議論自体が避けられがちです。
結果として、
家計負担の大きな部分を占める領域ほど、政治の課題に上りにくい
という逆転現象が起きます。
なお、インボイス制度そのものの仕組みや、なぜ事業者の実務負担が増えたのかについては、別記事で基礎から解説しています。
部分最適が積み重なる政策決定の実現
食料品の消費税ゼロは、単体で見れば「何もしないよりは分かりやすい対策」です。
しかし、
- 家計への効果は限定的
- 制度は複雑化
- 事業者負担が増える可能性
といった問題を抱えています。
それでも選ばれるのは、
- 短期的な政治的合理性
- 部分最適の積み重ね
が、政策決定を支配しているからです。
食料品の消費税ゼロが、制度面ではどのような歪みや事業者負担を生むのかについては、別記事でインボイス制度との関係を含めて詳しく整理しています。
「なぜ別の選択肢が議論されにくいのか」
恒常減税や社会保険料改革、所得再分配の見直しといった政策は、
- 効果が大きい可能性がある
- しかし対立も多い
という性質を持ちます。
そのため、
効果は小さくても、摩擦の少ない政策
が優先される傾向が強まります。
これは特定の政党に限らず、政治構造そのものの問題といえるでしょう。
まとめ──「分かりやすさ」が施策を歪めるとき
食料品の消費税ゼロが繰り返される背景には、
- 有権者に伝わりやすい
- 短期的に評価されやすい
- 構造改革を先送りできる
という政治的合理性があります。
しかし、その合理性は必ずしも、
- 家計を持続的に楽にする
- 経済全体を底上げする
方向には一致しません。
政策kを考える際には、「分かりやすさ」だけでなく、
何が議論から外されているのか
といったところにも目を向ける必要があるのではないでしょうか。














