最強の安全保障はミサイルではない──防衛9兆円時代に置き去りにされる日本経済

最強の安全保障はミサイルではない──防衛9兆円時代に置き去りにされる日本経済

2025年12月26日、政府は2026年度一般会計予算案を閣議決定した。

総額は122兆3092億円と過去最大を更新。

社会保障費と国債費の増加に加え、防衛費は初めて9兆円台に達した。

高市政権はこれを「責任ある積極財政」と位置づけるが、30年近く低成長が続き、物価高の影響で生活が苦しいと感じる国民が増えている現状を踏まえると、疑問は残る。

本当に今、日本に必要なのは「軍事費の拡大」なのか。

それとも、「国民生活と経済基盤の立て直し」なのか。

本記事では、2026年度予算案の内訳を確認しながら、防衛費拡大が家計と日本経済に与える影響を整理し、
「経済こそが最大の安全保障ではないか」という視点から検証する。

2026年度予算案の全体像|過去最大更新の背景

2026年度予算案では、税収が約83兆円台と高水準を見込む一方、歳出の増加がそれを上回り、新規国債発行額は約29兆円規模とされている。

歳出拡大の主因は、以下の3点だ。

  • 社会保障費の自然増
  • 防衛費の大幅拡大
  • 金利上昇を背景とした国債費の増加

主要歳出項目(政府予算案ベース)

分野令和7年度予算(当初)令和8年度予算増減
社会保障関係費382,938390,559+7,621
国債費282,179312,758+30,579
防衛力整備計画対象経費84,74888,093+3,345
地方交付税交付金等188,728208,778+20,050
( 出典:財務省「令和8年度予算フレーム」 )

ここで重要なのは、景気回復や家計支援に直結する支出が大きく増えているわけではない点だ。

防衛費9兆円の現実──安全保障強化と国民負担

防衛費は約9兆円規模となり、過去最大を更新した。

内容としては、

  • 長射程ミサイル等のスタンドオフ防衛能力
  • 無人機・次世代装備の導入
  • 南西地域を中心とした防衛体制強化

などが盛り込まれている。

周辺国の軍事動向を踏まえれば、防衛力の一定の強化は理解できる。

問題は、その拡大ペースと財源のあり方だ。

防衛費はGDP比2%水準を達成した後も、維持・更新コストが継続的に発生する。

政府内では、将来的な増税や社会保険料負担増による財源確保が議論されており、最終的な負担は国民に及ぶ可能性が高い。

社会保障費と国債費──家計に跳ね返る構造

社会保障費は、約39兆円と過去最大。

高齢化の進行に加え、医療・介護分野の費用増が続いている。

また、国債費は金利上昇を背景に増加。

「金利のある世界」への回帰は、国の財政だけでなく、

  • 住宅ローン金利
  • 企業の借入コスト
  • 家計の可処分所得

にも影響を及ぼす。

ここに、物価上昇が重なることで、家計の実質的な負担感はさらに強まる。

第2次トランプ政権下における通商環境と日本経済

2025年1月に発足したトランプ第2次政権下で、関税政策を重視する通商姿勢が改めて前面に出ている。

この政策は、

  • 輸入物価の上昇(円安と関税のダブルパンチ)
  • 日本企業における輸出環境悪化
  • 世界経済の不確実性拡大

といった形で、日本経済にも影響を及ぼす可能性がある。

物価高と賃金停滞が同時に進めば、家計の消費余力はさらに削られる。

家計シュミレーション(4人家族・世帯年収700万円)

4人家族・世帯年収700万円という「平均より少し上」の層は、公的支援の対象から外れやすい一方で、負担増の直撃を受けるボリュームゾーンである。

この世帯をもとに、生活の実感に即して整理してみると、

  • 社会保険料・税負担増:年5〜10万円
  • 物価上昇による生活費増:年10〜20万円
  • 金利上昇による住宅ローン負担:月数千円規模

これらを合計すると、可処分所得の圧迫は無視できない水準となる。

これは「我慢すれば何とかなる」水準ではない。

消費が冷え、企業収益が落ち、税収も伸びなくなる──

経済全体が弱る悪循環だ。

経済を弱らせて、防衛は維持できるのか

ここで、はっきりさせておきたいことがある。

問題は、防衛費の必要性そのものを否定することではない。

真の問題は、国民の6割が「生活が苦しい」と感じる窮状において、家計を支える政策が後回しにされている現状にある。

「防衛力」とは、強固な「経済力」という土台の上にのみ成り立つものだ。

国民が疲弊し、企業が投資意欲を失い、国の成長が止まってしまえば、肥大化した防衛費はやがて国家を押し潰す「重荷」へと変わる。

歴史を振り返っても、経済が衰退した国が長期的に安全を保てた例は極めて少ない。

経済という「供給源」を枯らしてしまえば、いかに優れた装備を揃えたところで、それを維持し続ける力そのものが失われるからだ。

移民政策との接続──弱った経済の「対症療法」

労働力不足という喫緊の課題に対し、政府は移民・外国人労働力の受け入れ拡大を急いでいる。

しかし、国民の賃金が上がらず、家計が困窮している現状でこの政策を強行すれば、以下のような深刻な副作用を招く恐れがある。

  • 賃金のさらなる下押し
    賃金労働力の供給増が、本来進むべき「生産性向上による賃上げ」のブレーキとなる。
  • 社会的摩擦の激化
    経済的余裕がない社会では、文化や習慣の違いが排外的な感情や摩擦を生みやすい。
  • 社会保障負担の増大
    低所得層の増加は、将来的に行政サービスや社会保障制度のコスト増として跳ね返る。

移民の受け入れは、決して経済成長を約束する「万能薬」ではない。

本来必要なのは、国内の労働者が適正な賃金を得て、消費を拡大できる経済構造の再構築である。

その土台を放置したまま労働力を外部に頼ることは、根本原因を解決しないまま痛みを和らげるだけの「対症療法」に過ぎない。

経済という「体」そのものが衰弱した状態では、どのような外部施策も劇薬となり、社会の歪みを広げる結果を招くだけである。

経済を強くすることこそが、最強の安全保障

「安全保障」とは、兵器の数や予算の額だけで決まるものではない。

真の安全保障とは、以下の三つの柱が揃って初めて成立するものだ。

  • 国民が安心して暮らせる「生活の安定」
  • 企業が正当な利益を生み出せる「産業の活力」
  • それらを支える「持続的な経済成長」

こうした土台があって初めて、防衛力は長期的に維持可能となる。

逆に言えば、国の経済を強くすることこそが、最も強固で持続可能な安全保障に他ならない。

繰り返すが、防衛費の9兆円という規模そのものが絶対的な悪なのではない。

真の問題は、国民生活が限界に近づく中で、「経済を立て直す抜本的な政策」と「安全保障」を両立させるビジョンが欠落していることにある。

家計を犠牲にした防衛は、いつか必ず息切れする。

国民が豊かさを実感し、未来に希望を持てる強い経済を取り戻すこと。

それこそが、いかなる最新鋭兵器よりも強力な、国を守るための「盾」となるのである。

結論──問われているのは「優先順位」

2026年度予算案は、防衛力強化という明確な方向性を示した。

一方で、家計と実体経済への配慮が十分だったかは、今後も厳しい検証が必要だろう。

防衛か、経済か。

本来、これらは二項対立ではない。

経済を強くすることこそが、安全保障を強固にする唯一の道だからだ。

防衛費9兆円という選択は、今の日本にとって本当に最適だったのか。

国民生活が限界に近づくなかで、私たちが守るべき「国の姿」とはどのようなものか。

いま、その優先順位が改めて問われている。

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