政府・与党が、インボイス制度における経過措置(7割控除)を延長・緩和する方針を固めた。
2016年10月から控除率が大幅に下がる予定であったが、そのペースが緩やかになり、免税事業者や小規模事業者にとって実質的な「延命措置」となる内容である。
この緩和は、フリーランスやクリエイターにとって大きな意味を持つ。
インボイス制度は現場の負担を直撃し、取引の不安定化や収入減を招いているからだ。
今回の方針は、その痛みを和らげる一歩といえる。
一方で、制度自体の根本は変わらない。
控除率は段階的に下がり、最終的にはゼロへと向かう。
つまり、現場の負担が完全に解消されるわけではない。
本記事では、インボイス経過措置の延長・緩和が何を意味するのかを整理し、前回取り上げた「コンテンツ支援550億円」との関係から、政策の優先順位について改めて考えてみたい。
インボイス経過措置の延長・緩和とは
今回示された方針は、インボイス制度のなかでもとくに影響の大きい、「免税事業者からの仕入れに対する控除率」の見直しである。
本来の予定は、次のとおりであった。
- 2026年10:控除率8割 → 5割
- 2029年10月:控除率0(特例廃止)
これが今回の方針では──
- 2026年10月:7割
- 2028年10月:5割
- 2030年10月:3割
- 2031年10月:廃止(予定)
という形で、控除率の引き下げが緩やかになる。
また、課税転換者向けの「2割特例」も延長される方向である(ただし縮小)。
これは制度の根本を変えるものではないが、現場の負担を急激に増やさないための“延命措置”といえる。
この緩和がフリーランスの「命綱」になり得る理由
インボイス制度は、フリーランスや小規模事業者にとって、“生活に直結する負担”である。
今回の緩和が重要なのは、以下の理由による。
免税事業者の排除リスクが減る
控除率5割から一気に0となる予定だったため、企業側の「免税事業者とは取引しにくい」という状況が生まれていた。
控除率が緩やかに下がることで、免税事業者が仕事を失うリスクが軽減される。
課税転換者の急激な負担増を回避
2割特例が延長されることで、2026年に突然フル課税になる地獄が避けられる。
これは個人事業主にとって非常に大きい。
制度の“ソフトランディング”が可能になる
インボイス制度は急激に導入されたため、現場の混乱が大きかった。
今回の緩和は、制度を維持しつつ、現場の崩壊を避けるための調整といえるだろう。
それでも制度の根本は変わらない
今回の緩和は前進であるが、インボイス制度の根本的な問題は残ったままである。
- 控除率は最終的にゼロに向かう
- 事務負担は減らない
- フリーランスの立場は依然として弱い
- 制度の複雑さは解消されない
つまり──
今回の緩和はあくまで“痛み止め”であって、根本治療ではない。
政策の優先順位の問題
ここで、前回投稿した記事「コンテンツ支援550億円より、まずインボイス廃止が先なのでは?」との関係が浮かび上がる。
政府は、コンテンツ産業の海外展開に550億円を投じる方針を示したが、その一方で、現場のクリエイターはインボイス制度で疲弊している。
今回の緩和は、「現場の悲鳴を無視できなくなった結果」ともいえる。
つまり、政策の優先順位が問われているという点で、前回の記事と今回のテーマは密接につながっている。
結論 ─ インボイス緩和は前進だが、現場の負担軽減はまだ道半ばである
今回の経過処置の延長・緩和は、フリーランスや小規模事業者にとって、たしかに“命綱”となり得る。
しかし、制度の根本は変わらず、現場の負担が完全に解消されるわけではない。
政策の優先順位を考えるなら、海外支援よりも、まず国内の制作環境の立て直しが先である。
まとめ
日本のコンテンツ産業やフリーランスの働き方は、 制度の影響を強く受ける構造にある。
今回のインボイス緩和は前進であるが、 現場の負担は依然として重いままである。
政策の優先順位を見直し、 まず国内の基盤を整えることが求められている。












