2026年度予算案が年末に閣議決定された。
世間の注目は、「防衛費9兆円」に集まりがちだが、実はもっとも増えている項目は防衛費ではない。
家計にとってより深刻なのは、国債費の爆増である。
国債費とは、過去に発行した国債の利払いと償還に使われる費用のことだ。
つまり、いまの日本が直面しているのは、「未来への投資」ではなく、「過去の借金の返済」に予算が吸い取られていく構造である。
財務省が公表した令和8年度予算フレームによれば、国債費は前年から3兆579億円増加し、31兆2,758億円に達した。
これは防衛力整備計画対象経費の増加額(+3,345億円)の約9倍に相当する。
(単位:億円)
| 項目 | 令和7年度 | 令和8年度 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 国債費 | 282,179 | 312,758 | +30,579 |
| 防衛力整備計画対象経費 | 84,748 | 88,093 | +3,345 |
| 社会保障関係費 | 382,938 | 390,559 | +7,621 |
| 地方交付税交付金等 | 188,728 | 208,778 | +20,050 |
| 一般歳出(合計) | 681,071 | 701,557 | +20,485 |
この数字が示すのは、2026年の日本が「防衛か家計か」という単純な二択ではなく、“国債費という巨大な固定費”に政策の自由度を奪われているという現実だ。
金利のある世界に戻った日本──借り換えリスクが一気に表面化
日本は長い間、ゼロ金利という特殊な環境に守れらてきた。
国債を発行しても利息はほとんどかからず、借金を借金で返す「借り換え」も低コストで済んでいた。
しかし2023~2025年にかけて、世界的な金利上昇と日銀の政策修正が重なり状況は一変。
国債の平均金利はじわじわと上昇し、借り換えのたびに利払いが増える構造が強まっている。
日本の国債は償還期間が短く、毎年大量の国債を借り換える必要があるため、金利上昇の影響を受けやすい。
2026年度の国債費増加の大部分は、この「借り換え金利の上昇」が原因だ。
つまり、これまで見えにくかった“金利リスク”が、ついに家計の前に姿を現し始めたということだ。
60年償還リールの“ツケ”がついに回り始めた
日本の国債は、「60年返還ルール」で返済されている。
これは、国債を発行したら60年かけて返していくという仕組みだが、実際は“返済の先送り”に近い。
毎年新しい国債を発行しながら、過去の国債の償還費を積み上げていくため、償還費は年々増える。
これに金利上昇が重なると、償還費と利払いが同時に膨らむ。
その結果、教育、科学技術、子育て支援、家計支援といった「未来への投資」が削られ、財政の硬直化が進む。
実際、令和8年度予算では、経済対策・家計支援の枠が前年より7,000億円以上削減されている。
国債費の増加は、最終的に家計へ跳ね返る
国債費が増えると、政府は次のいずれかで対応するしかない。
- 税負担を増やす
- 社会保障費の引き上げ
- 公共サービスの削る
- 新規政策を縮小
どれを選んでも、最終的には家計が負担することになる。
たとえば、国債費が3兆円増えた場合、単純に人口で割ると国民一人あたり約2.4万円の潜在的な負担増になる。
もちろん、実際には税や社会保障の形で間接的に跳ね返るが、家計にとっては確実に重い。
金利上昇・関税・物価──2026年の家計は複合的に圧迫される
2026年の家計は、ひとつの要因ではなく、複数の負担が同時に押し寄せる年になる。
その中心にあるのが、金利上昇と関税、そして物価高だ。
まず金利上昇は、特に変動金利型の住宅ローンを抱える家計に直撃する。
日銀が2025年12月に政策金利を0.75%へ引き上げたことで、長期金利(10年国債利回り)は2%前後で推移し、住宅ローン金利も上昇傾向にある。
仮に、借入額3,000万円・35年返済の場合、金利が0.5%上昇すると毎月の返済額は約8,000円増え、年間では約10万円の負担増となる(元利均等返済、概算)。
これは電気代1年分に匹敵する金額であり、多くの家計にとって無視できない。
さらに、トランプ関税の影響で輸入品価格が上昇し、食品・日用品・家電などの生活必需品が値上がりしている。
民間の試算では、関税による物価押し上げ効果で家計支出が1〜2%増える可能性があり、年間数万円規模の負担が積み重なる見込みだ。
これらを合算すると、2026年の家計負担は概算で年間10〜20万円以上増える可能性がある。
あくまでシミュレーションではあるが、国債費の増加(利払い急増)、金利上昇、関税・物価高が同時に家計を圧迫するのが2026年の特徴だ。
賃上げが進むポジティブ要因もあるが、多重負担に備えた家計管理が重要である。
まとめ──2026年、日本はどこへ向かうのか
防衛費が初めて9兆円台に乗ったことが大きく注目される一方で、日本経済の本当のリスクは、国債費の爆増と金利上昇による借り換え負担にある。
2026年度予算案で国債費は31兆円を超え、歳出増加の最大要因となった。
これは、「金利のある世界」に戻ったことで、これまで低金利に依存して先送りされてきた巨額の借金の“ツケ”が一気に表面化し始めたことを示している。
そしてその負担は、最終的に増税、保険料引き上げ、物価高、歳出抑制という形で、家計と現役世代に跳ね返る。
住宅ローン金利の上昇や輸入品値上がりも加わり、2026年の家計は多重の圧力にさらされる年となる。
2026年の日本は、「過去の借金」をどう処理し、「未来の投資」(防衛強化、成長分野への支出)をどこまで優先するのか。
その厳しい選択を迫られている。
財政と安全保障、そして家計の持続性をどう両立させるのか──
その問いが、これまで以上に重みを増している。














